2008年04月12日

横山幸雄 ピアノ・リサイタル

[クラシック倶楽部を楽しむ] 本日のプログラム

[NHK BShi 4月7日放送分]

横山 幸雄 ピアノ・リサイタル

(演奏曲目)

  ベートーベン ピアノ・ソナタ 第30番 ホ長調 作品109
           ピアノ・ソナタ 第32番 ハ短調 作品111
           ピアノ・ソナタ 第8番 ハ短調 作品13「悲愴」から
                             第2楽章
           ピアノ・ソナタ 第17番 ニ短調 作品31 第2から
                             第3楽章

(会場)

  東京オペラシティ コンサートホール
  (2006年8月4日収録)

[所感]

本日の「クラシック倶楽部を楽しむ」は、横山幸雄がベートーベンの最晩年に作曲したピアノ・ソナタの第30番と第32番を演奏します。

横山のピアノと言えば、ベートーベンのピアノ・ソナタを全曲公開録音で収録してしまうなど、その精力的な演奏活動で注目を浴びています。

横山は年齢的にも30代半ばで、いろいろなジャンルに幅広く活躍できる時期ですが、自ら作曲も手がけるなど、新しい時代にいながら古風な一面を持った演奏家と言えるのかも知れません。

さて、1曲目はピアノ・ソナタ第30番です。

横山のピアノはとても語り上手に演奏していきます。

この第30番のソナタを聴くとき、私には何故かベートーベンが水の流れの一生を語っているように感じてしまうのです。

第1楽章では、山奥で泉が湧き、小さな川の流れとなってさらさらと流れていく風景が見えてきます。

第2楽章では、小さな小川の支流が集まって谷川となり、渓谷を急流となって流れていく様子が見えてきます。

そして第3楽章では、谷川の急流がさらに幾筋も集まって、平野でゆっくりと流れる大きな河となって海へと続く河口まで辿り着く様子が見えてきます。

このようにこのソナタを聴いていると、ベートーベンの作曲家としての人生が川の姿に象徴されて語られているように感じるのです。

晩年のベートーベンは様々な人生の苦悩や喜びを寛大な包容力を持って受け入れ、壮大な河の流れのように音楽で表現できる境地に至ったのではないでしょうか。

横山のピアノは細かい音の響きやフレーズ単位の説明をするのではなく、第30番のソナタを全体的に大きくとらえて、非常に説得力のある演奏を聴かせてくれたと思います。

次の曲目は、ベートーベンの最後のピアノ・ソナタとなった第32番です。

このソナタを聴くときに、私は演奏者に物語などを話してもらいたいなどと思いません。

何故なら、このソナタにはバッハが「神のみに捧げる」と言ったような精神の世界が存在すると思うからです。

ですから、演奏されるベートーベンの旋律を聴きながら、自分も浄化されていきたいと強く望むのです。

第1楽章の荘厳な序奏に続くフーガ的旋律の流れは、何度も何度も途絶えては復活します。そこには死に対する恐れなどなく、死後にも復活して命を与えられることへの賛美が聞こえてくるようです。

第2楽章では、死後の世界が穏やかで、天上でいろいろな楽しい出来事があるということを次々と現れる変奏曲が暗示しているようです。

ベートーベンの作曲した最後のピアノ・ソナタは、聴く者に天上の世界を感じさせ、素晴らしい世界があることを神に感謝しているように聞こえてきます。

横山は、技術的にも非常に難しい曲の崇高なテーマをとらえ続けながら、集中力を切らせずにピアノの究極の演奏を見事に見せてくれたと思います。

この後に、横山はピアノ・ソナタ、「悲愴」の第2楽章と「テンペスト」の第3楽章を演奏しましたが(アンコールでしょうか?)、最晩年のピアノ・ソナタを2曲続けて聴いた後だけに、ポピュラーな旋律を持つ2曲はとても心地よく、横山の演奏家として聴衆を思いやる優しい心のようなものが感じられました。

このように、横山の演奏を聴いてから、さて、横山はベートーベン弾きなのだろうか、と考えると、往年のバックハウスやケンプの出しているピアノの音色とはやはり少し違うのではないかとの印象はありました。

おそらく、使用していたピアノによる影響が大きかったのではないかと思います。

また、横山をベートーベン弾きだなどと決めつける必要は全くなく、もっといろいろな分野に挑戦することに期待したいところです。

本日の「クラシック倶楽部」は、横山幸雄のピアノでベートーベンを堪能することができ、本当に楽しい時間を過ごせました。

以上、「クラシック倶楽部を楽しむ」でした。
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2008年04月11日

小川典子、徳永二男、川崎和憲、上村昇 室内楽コンサート

[クラシック倶楽部を楽しむ] 本日のプログラム

[NHK BShi 4月4日放送分]

小川典子、徳永二男、川崎和憲、上村昇 室内楽コンサート

  バイオリン 徳永 二男
  ビオラ   川崎 和憲
  チェロ   上村 昇
  ピアノ   小川 典子

(演奏曲目)

  ショスタコーヴィチ ピアノ三重奏曲 第2番 ホ短調 作品67から
                   第1楽章、第4楽章
  シューマン ピアノ四重奏曲 変ホ長調 作品47

(会場)

  岡山県吉備中央町・ロマン高原かよう総合会館 レインボーホール
  (2006年10月7日収録)

[所感]

本日の「クラシック倶楽部を楽しむ」は、室内楽コンサートという副題のもと、ピアノの小川典子、ヴァイオリンの徳永二男、ビオラの川崎和憲そしてチェロの上村昇という現在活躍している日本の演奏家たちが、アンサンブルを編成して演奏を聴かせてくれます。

この演奏会は岡山県吉備中央町が合併2周年を記念して企画したものであると演奏会場となる総合会館の風景とともに紹介されていました。

まず、1曲目は小川のピアノ、徳永のバイオリンそして上村のチェロという編成で、ショスタコーヴィチのピアノ三重奏曲第2番が演奏されます。

この曲は、ショスタコーヴィチが亡き友人ソレルティンスキーに捧げたもので、1944年の戦火の中で書き上げられたものであると説明されていました。

4楽章構成の曲ですが、NHKの編集によるものでしょうか第1楽章と第4楽章が演奏されました。

第1楽章の冒頭では、チェロがA線のフラジオレットによる高音を出している一方で、バイオリンがG線の低い音を出すという奇妙な反転現象が見られますが、やがて静かに友人のソレルティンスキーを思い出し懐かしむような旋律に移ります。

しかしそれも束の間、現実の戦乱の騒々しい世界を表すかのように銃声やヒコーキの飛び交う音が聞こえてくるようです。

第4楽章は、弦楽器のピッチカートやスタッカート奏法とともに、ピアノの常に不安がつきまとうような旋律が流れます。

ショスタコーヴィチが抱く祖国の独裁体制への予感のようにも聞こえます。

小川、徳永、上村の日本人トリオはショスタコーヴィチをとても分かりやすく、説得力のあるまとめ方をしていたと思いました。

2曲目は、ビオラの川崎が加わって、シューマンのピアノ四重奏曲が演奏されます。

第1楽章は、ゆっくりとした序奏からピアノの奏でるロマンティックな旋律に弦楽トリオが音声を重ねていくという気持ちの良い演奏に引き込まれてしまいました。

第2楽章に移ると、一転して不安に怯えるような旋律が現れます。

川崎の弾くビオラの音色は本当に美しく哀愁に富んでいて、この楽章全体を支配しているようでした。

第3楽章は、アンダンテ・カンタービレの指示のように、各楽器が優しく丁寧に歌を歌っていきます。

上村のチェロも、徳永のバイオリンも、ピアノの小川に誘われるように心地よく響き渡ります。

第4楽章では、フィナーレに向って各楽器のパートが追いかけっこをしているように交錯して、最後は一緒になって曲の終わりを迎えます。

あまり演奏機会のないシューマンのピアノ四重奏曲ですが、この4人のアンサンブルは素晴らしい演奏をして聴かせてくれたと思います。

特に感じたのは、ピアノトリオでは入らない楽器である川崎の弾くビオラの存在の大きさです。

川崎のビオラは、アンサンブルのバランスを崩すことなく、しかもその旋律がしっかりと聴く者の心に響いていたのです。

また、ピアノの小川は、ベーゼンドルファーのピアノからきめの細かい粒のそろった音色を作り出して、アンサンブル全体をしっかりリードしていたと思います。

日本の一流どころが4人も集まったのだから、と言ってしまえばそれまでですが、とにかくこの4人のアンサンブルとしての音楽づくりが上手なのには感動してしまいました。

本日の「クラシック倶楽部」は、日本人演奏家が4人集まって素晴らしいアンサンブルの妙味を味あわせてくれた充実したひと時でした。

以上、「クラシック倶楽部を楽しむ」でした。
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2008年04月10日

アフラートゥス・クインテット & 菊池洋子

[クラシック倶楽部を楽しむ] 本日のプログラム

[NHK BShi 4月3日放送分]

アフラートゥス・クインテット & 菊池洋子 コンサート

  フルート   ロマン・ノヴォトニー
  オーボエ   ヤナ・ブロジュコヴァー
  クラリネット ヴォイチェフ・ニードゥル
  ファゴット  オンジェイ・ロスコヴェッツ
  ホルン    ラデク・バボラク
  ピアノ    菊池 洋子

(演奏曲目)

  モーツアルト: 木管五重奏曲 変ロ長調 K.589(ウィドラー編)から
                第1楽章、第3楽章、第4楽章
  モーツアルト: ピアノと管楽器のための五重奏曲 変ホ長調K.452
  リヒャルト・シュトラウス: 交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」(カープ編)

(会場)

  紀尾井ホール
 (2006年9月24日収録)

[所感]

本日の「クラシック倶楽部を楽しむ」は、アフラートゥス・クインテット(木管五重奏団)とピアノの菊池洋子がジョイント・コンサートを聴かせてくれます。

アフラートゥス・クインテットは1995年にチェコ出身の名門オーケストラのメンバーにより結成され、1997年にはミュンヘン国際コンクールで優勝するという実績のあるアンサンブルであると紹介されていました。

1曲目は、そのアフラートゥス・クインテットがモーツアルトの木管五重奏曲を演奏するということで、かなりの期待をかけていました。

ところが、演奏が始まるとびっくりしてしまいました。

楽器の各パートの音がアンサンブルとしてまとまらないし、休符のところで間が抜けたように旋律が止まってしまう、といった有様です。

モーツアルトのいつも小川が流れているような旋律の流れや宮廷風の軽快さなど全く感じることができず、ちっとも楽しくないのです。

NHKもこのようなことを意識してか第2楽章をカットしていました。

アフラートゥスはモーツアルトが苦手なのでしょうか。

これだけのメンバーがいてそんなことはない筈ですから、よほど疲れていてコンディションが良くなかったのではないでしょうか。

とにかく、優勝が決まってしまったトーナメントで消化試合を見せつけられているようでつまらない、退屈な時間を過ごしてしまいました。

2曲目もモーツアルトでした。

今度は、菊池洋子のピアノとオーボエ、クラリネット、ファゴットそしてホルンの4管による構成でした。

ここでもアフラートゥスのメンバーは最悪の状態を脱しきれませんでした。

第1楽章で菊池のピアノがモーツアルトの旋律を浮き立たせるのですが、五重奏の部分になると、せっかくの菊池の誘いをぶち壊すように無機質な楽器の音が響き渡ります。

第2楽章に至っては、アフラートゥスのメンバーがバラバラになってしまって、音楽をまとめようという努力など全く見られません。

第3楽章は、美しいピアノの旋律を4管が受け継いでキャッチボールをしているように、楽しく軽快なモーツアルトの旋律が流れてくる筈ですのに、キャッチボールがちっともうまくいきません。

菊池のピアノの旋律だけがモーツアルトをむなしく表現するのみです。

これでは菊池がかわいそうです。

やはり、アフラートゥスはモーツアルトが苦手なのだという印象を強く受けました。

それにしても、素晴らしい実績を持つアフラートゥスが何故こんなにひどい演奏をするのでしょうか。

聴衆からは演奏後に拍手がありましたが、怒っている筈です。

菊池には申し訳ないですが、足を踏み鳴らしてブーイングをしてみてはいかがでしょうか。

アフラートゥスは、モーツアルトの音楽の恐ろしさをもっと肝に銘じて今後の演奏に臨んでいただきたいと思います。

最後の曲は、リヒャルト・シュトラウスの「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」でした。

アフラートゥスの5管と菊池のピアノによる編成になっていました。

この曲は、交響詩として明確なテーマを持っており、各楽器パートには役割が振り分けられているので、個人芸の披露という意味ではアフラートゥスのメンバーには絶好の曲というところです。

むかしむかし・・・、から始まってバボラクのホルンがティルのテーマを吹き、物語が繰り広げられました。

カープの編曲ではピアノパートに負荷をかけるようになっていたようですが、菊池のピアノはアンサンブル全体をしっかり支えていて素晴らしい演奏をしていたと思います。

聴衆は、このコンサートで「ティル・オイレンシュピーゲル・・・」が組み込まれていたことに救われる思いだったのではないでしょうか。

本日の「クラシック倶楽部」は、プロフェッショナルのメンバーでも、時として演奏を失敗することがある、ということが出てしまった興味のある企画でした。

以上、「クラシック倶楽部を楽しむ」でした。
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2008年04月09日

大西孝恵とボストンの仲間たち

[クラシック倶楽部を楽しむ] 本日のプログラム

[NHK BShi 4月2日放送分]

大西孝恵とボストンの仲間たち
〜チェンバロ・アンサンブルコンサート〜

  チェンバロ 大西孝恵
  バイオリン ホールドン・マーティソン
  バイオリン クリスティーナ・デイ・マーティソン
  チェロ   ミッキー・カーツ

(演奏曲目)

  モーツアルト: チェンバロ協奏曲 ニ長調 K107 第1
  ラモー: クラヴサン・コンセール第1番
  A.フォルクレー: クラヴサンのための組曲 第5番から(J.B.フォルクレー編)
  ヴィヴァルディ: 2本のヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ
                   「フォリア」作品1第17

(会場)

  大阪市 イシハラホール
  (2006年6月25日収録)

[所感]

本日の「クラシック倶楽部を楽しむ」は、“大西孝恵とボストンの仲間たち”と題して大西孝恵のチェンバロ演奏を中心としてバロック音楽アンサンブルが企画されていました。

大西はチェンバロ奏者として優れた実績を重ねているだけでなく、チェンバロの研究にも本格的に取り組んでいると紹介されていました。

他のメンバーについては、特に個別の紹介はありませんでしたが、ボストン周辺のそれぞれ違う部署で音楽活動をしているメンバーが集まったと紹介されていました。

さて、1曲目はモーツアルトのチェンバロ協奏曲です。

チェンバロ、バイオリン2台、チェロというメンバー構成になっていました。

曲は3楽章構成で、1楽章が荘厳な国王の行進のような旋律でオーバーチュアに当たる部分ではないかと思います。

2楽章は優雅な4拍子の旋律が続き、宮廷の中での皆がおしゃべりをしている情景の中で演奏したのではないでしょうか。

3楽章は3拍子で軽快な踊りのリズムとなり、舞踏へと誘います。

曲全体は、まさに宮廷音楽の代表的構成となっていました。

1楽章と2楽章には、チェンバロのカデンツアも演奏されて、大西の演奏者としての魅力を十分に引き出していたと思います。

ただ、使用されたバイオリンもチェロも現代楽器であって、バロック弓を使うでもなく、全部をガット弦にするということでもありませんでした。

聴く側としては、バロック的な弦の音とチェンバロの音の調和を望みたいところでしたが、演奏終了後のインタヴューの中で、バイオリンのホールドン・マーティソンが、「あえて古楽器と現代楽器の融合ということを意識して、挑戦的な演奏をしてみた」と話していました。

2曲目は、ラモーのクラヴサン・コンセール第1番ですが、チェンバロ、バイオリン、チェロのトリオ形式になっていました。

1番目はクリカンという表題が付いており、フビライ・ハンをモチーフにして18世紀にフランスで異国情緒が好まれたという説明がされていましたが、確かにフビライ・ハンの勇壮な勢いというものが感じ取れる旋律で、現代チェロの力強い音色が生かされていたのかなと思いました。

2番目はリヴリという表題が付いており、リヴリというのは地名で統治していたリヴリ伯爵の追悼のために作られた曲であるという説明がされていましたが、大西が2段鍵盤式チェンバロの上段だけで悲しげな旋律を作り出しているのが印象的でした。

3番目は、ヴェジネという表題が付いており、ヴェジネというのも地名で土地柄が明るく、明るい雰囲気の旋律が奏でられるという説明がされていましたが、ここでは現代チェロの音色が通奏低音部で強く響いてしまい、気になってしまいました。

2曲目の曲全体としては、チェンバロと現代楽器のトリオという挑戦的な試みであったと思いますが、やはり原始的な音色を出す古楽器によるトリオの方が受け入れられるのではないかと感じてしまいました。

3曲目は、チェンバロのソロでフォルクレーのクラヴサンのための組曲第5番から“ラモー”と“ジュピター”の2曲が演奏されました。

大西はインタヴューの中で「チェンバロという楽器は、一瞬に音が出て、一瞬に音が消えてしまうのです。ですから、チェンバロは弾きながらその一瞬と一瞬の間の空気を味方につけなければなりません。」と話していましたが、大西のチェンバロのソロでは、音と音との空間を“間(ま)”という言い方をすれば、本当に素晴らしい“間”を旋律の一部として作り上げていたと思いました。

特に、対照的な2曲の”ラモー“と”ジュピター”を弾いて、“ラモー”ではゆっくりとした荘厳な旋律の中で、ゆったりと安心できるような“間”を取って魅力的に聴かせ、“ジュピター”では常動的で戦争のような旋律の中で、これは現代の音楽ではないか、と思わせるような機敏な“間”を取って衝動的に聴かせてしまったのです。

大西のチェンバロは、単なる古楽器ではなく、現代楽器としても通用することを証明したような演奏でした。

今回のプログラムはここで終わりにしても十分満足が得られる企画だったと思います。

最後に演奏された「フォリア」は、大西の通奏低音が現代楽器とどれだけ融合できるのか、という実験的試みだったように思います。

それなりの努力には敬意を表しますが、やはり聴衆を喜ばすことに専念していただきたかったと感じてしまいました。

本日の「クラシック倶楽部」はチェンバロと現代楽器による実験的アンサンブルを聴かせてくれて興味のある企画でした。

以上、「クラシック倶楽部を楽しむ」でした。
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2008年04月08日

アート・オブ・ブラス・ウイーン

[クラシック倶楽部を楽しむ] 本日のプログラム

[NHK BShi 4月1日放送分]

アート・オブ・ブラス・ウイーン コンサート

  トランペット ハンス・ガンシュ
  トランペット ハインリヒ・ブルックナー
  ホルン    トーマス・ビーバー
  トロンボーン エーリヒ・コイエーダー
  チューバ   ジョナサン・サース

(演奏曲目)

  バッハ 目をさませと呼ぶ声が聞こえ(マリアンネ・ブルックナー編)
  クライスラー 愛の喜び(キュブルベック編)
           愛の悲しみ(キュブルベック編)
  ヨハン・シュトラウス ポルカ「観光列車」(マリアンネ・ブルックナー編)
  ドリーブ カディスの娘たち(マイルス・デイビス/ギル・エバンス/トマス・フーバー編)
  セロニアス・モンク メドレー(トマス・フーバー編)
    ブルー・モンク
    ストレート・ノー・チェイサー
    ルビー・マイ・ディア
    アイ・ミーン・ユー
    ラウンド・ミッドナイト
    ウェル・ユー・ニードント
  モンテヴェルディ 「聖母のための夕べの祈り」から
    トッカータ(ハインリヒ・ブルックナー編)
  オーストリア・クリスマス民謡集
    もうすぐ暗くなる
    いばらの森を行くマリア
    レオポルド 早く起きなさい
    羊飼いよ こちらへ
    静かに
    マリアのこもり歌
    天への扉は開かれた
    祈りの夜

(会場)

  東京オペラシティ コンサートホール
  (2006年12月12日収録)

[所感]

本日の「クラシック倶楽部を楽しむ」は、アート・オブ・ブラス・ウイーンのコンサートです。

アート・オブ・ブラス・ウイーンはウイーン・フィルのトランペット首席奏者として活躍してきたハンス・ガンシュを中心にウイーンで活躍する5人の演奏家によって結成された金管五重奏団で1994年から数えて9回来日している、と紹介されていました。

メンバーでは、ガンシュが最年長でリーダー格となっているようですが、今回のリサイタルではただ一人ニューヨーク生まれのチューバ奏者のジョナサン・サースが、メンバーの紹介をしたり、演奏の合間に曲目の紹介をしたりしていて、企画を担当していたようです。

メンバーは所属オーケストラも違うし、フリーに活動をしている人もいるということですが、1981年に結成されて以来、25年以上もアンサンブル活動を続けているのですから、本当に素晴らしいことだと思います。

さて、演奏の方ですが、最初の4曲の「目をさませと・・・」、「愛の喜び」、「愛の悲しみ」、「観光列車」は、まさに5人のアンサンブルの歴史の証明のようなものでした。

テンポが変幻自在に変化するのですが、全く一糸乱れるところなく気持ちよく響いてきました。

また、ガンシュのトランペットの、ある時は流れるように優しく柔らかな旋律、またある時はスタッカートの聴いた鋭い旋律、というように変化と色調に富んだ音色には魅了されてしまいました。

次の「カディスの娘」、「セロニアス・モンク・メドレー」では、サースの解説が入ってから演奏されましたが、「カディス・・」ではドリーブの歌曲とは違って、場末の酒場で物憂げに過ごしている娘たちの姿が映し出されていたようでした。

また、「セロニアス・モンク・メドレー」では、ガンシュが右足でリズムをとる姿など、めったに見られない光景があったりしてとても面白く感じました。

スローテンポのブルースについては、ブルックナーのトランペットによるアドリブソロや、コイエーダーのトロンボーンの物憂げなアドリブソロや、ビーバーのホルンの4ビートに乗ったアドリブソロなどが次々に展開していって、名人芸が披露がされていました。

しかしながら、スローなブルースではジャズ的な雰囲気を作っていたアンサンブルも、「アイ・ミーン・ユー」の4ビートや「ウエル・ユー・ニードント」の2ビートのリズミカルな曲になると、やはり粘着性に欠けて、ジャズというよりクラシックに近い音楽に仕上がってしまったように思いました。

サースのチューバは、声を出して歌いながら吹く奏法や、パーカッションのように吹く奏法などを演奏して見せるなど、いろいろな工夫はあったのですが、クラシック演奏家がジャズを演奏するというのは本当に難しいことなのだと感じてしました。

最後は、収録時期がクリスマスに近いということもあって「オーストリア・クリスマス民謡集」が演奏されましたが、この日のアンサンブルとしては最も素晴らしいものであったと思います。

特に、ビーバーのトロンボーンがユーフォニュームに持ち替えられたためか楽器全体のバランスが一層豊かになったように感じられました。

金管楽器では唇の調整で音程を微妙に変化させることができるためか、民謡集ではアンサンブルの和声が純正律的な響きになっていて、素晴らしいハーモニーが透き通るように響き渡っていました。

ここに至って、アート・オブ・ブラス・ウイーンの真骨頂が明らかにされたのではないでしょうか。

5人のメンバーの超一流の演奏技術と、それぞれの奏者の個性が見事に調和した時間だったと感じてしまいました。

とりわけ、ガンシュとブルックナーのトランペットは、つややかで優しい音色を出す時には魅力に溢れていました。

心が癒されるような本当に幸せな時間を持てたように満足してしまいました。

本日の「クラシック倶楽部」は5人の金管楽器奏者によるアンサンブルを堪能させてくれた素晴らしい企画でした。

以上、「クラシック倶楽部を楽しむ」でした。
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2008年04月07日

ウイーン少年合唱団 演奏会

[クラシック倶楽部を楽しむ] 本日のプログラム

[NHK BShi 3月31日放送分]

ウイーン少年合唱団 演奏会

  合唱 ウイーン少年合唱団
  指揮・ピアノ ラウル・ゲーリンガー

(演奏曲目)

  オルフ カルミナ・ブラーナから“運命の女神よ”
  シューベルト アヴェ・マリア
  パーセル 来たれ芸術の子よ
  アイブラー 彼らはみなサバより来りて
  アルプス地方の民謡集
    僕は愉快な子ども
    ぼだい樹の下に
    雪が解けると
  ロジャーズ “サウンド・オブ・ミュージック”から
    サウンド・オブ・ミュージックのテーマ
    ドレミの歌
    ひとりぼっちの羊飼い
  ヨハン・シュトラウス ポルカ「うわ気心」
              皇帝円舞曲
  ヨハン・シュトラウス父 ラデッキー行進曲
  日本古謡 さくら(河西保郎編)

(会場)
  東京サントリーホール
  (2005年6月4日収録)

[所感]

「クラシック倶楽部を楽しむ」は管理人のクラシックマが旅行に出かけていたため、約1週間のお休みをいただいておりました。

さて、本日の「クラシック倶楽部を楽しむ」は、ウイーン少年合唱団の演奏会ということで、旅行ボケの頭をヒーリングさせるのには、まさに最適なプログラムというところでしょうか。

ウイーン少年合唱団は1498年に宮廷礼拝堂少年聖歌隊として創設されて以来、500年あまりの伝統を持ち、現在約100名の団員がいて4つのグループに分かれて活躍している、とテロップで紹介されていました。

また、ピアノと指揮をするラウル・ゲーリンガーについても、ウイーン少年合唱団の出身で、いまは団員たちの指導に当たっていると紹介されていました。

今回のグループは、ラウル・ゲーリンガーを挟んで右手に11名、左手に13名という構成で25名の編成になっていました。

演奏曲目については、少年たちの美しい声を聴いているだけで心休まるもので、なかなか感想というものは書きずらいです。

ただ、第一曲目のカルミナ・ブラーナから“運命の女神よ”を演奏したときの少年たちの迫力ある声には、ウイーン少年合唱団の歴史的変遷のようなものを感じてしまいました。

また、“来たれ芸術の子よ”は5部作のかなり長い演奏になっていて、少年たちにとっては何か特別な意味を持つ啓示を与えるような印象を感じました。

ウイーン少年合唱団は、演奏する曲が作曲された言語でそのまま歌ってしまうと聞いていましたが、サウンド・オブ・ミュージックはしっかり英語で歌っていました。

曲名の中には、ポルカ「うわ気心」のような日本語訳が付いているものがあり、少年たちがどんな歌い方をするのか一抹の不安がありましたが、テロップの和訳を見ていると全く「うわ気心」などとは関係のない内容になっていて、少年たちも楽しそうに歌っていたので安心しました。

皇帝円舞曲やラデッキー行進曲も内容的にはウイーン讃歌のように聴こえて、少年たちがやや国粋主義的な中で育っているのだろうかなどと感じてしまいました。

ラデッキー行進曲では、ウイーン・フィルのニューイヤー・コンサートのように聴衆に手拍子を求めるなど、エンターテイメント的要素も加わっており、少年合唱団としてそこまでやるの、という負の考え方もしてしまいました。

最後のさくらは、編曲のせいか速いテンポでポップス調に聴こえてしまい、やはり、さくらは日本音階的にゆっくり美しく歌ってほしいものだと感じてしまいました。

今回、ウイーン少年合唱団の演奏を聴いて、“天使の声”が500年という歴史の中で大きく変遷してきているのではないかと思えるものがありました。

ウイーン少年合唱団が世界中で演奏活動を行うことが少年たちにとってどのような意味を持つのでしょうか。

何か、そこには大人の都合による商業主義的意図が見え隠れしているように思えて仕方がありません。

ひょっとしたら、少年たちの方がもっとドライで、自分たちの将来の音楽活動への足掛かりをつかもうとしているのかも知れません。

会場の聴衆は若い女性が多く、聴く側の要求もアイドル的存在としてのウイーン少年合唱団を求めているのかも知れません。

疲れた頭のヒーリングと思って聴いていた本日のプログラムだったのですが、“天使の声”はあまり聴こえてきませんでした。

本日の「クラシック倶楽部」はウイーン少年合唱団が500年の年月の中で大きく変わろうとしている姿を垣間見ることができたように思います。

以上、「クラシック倶楽部を楽しむ」でした。
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2008年03月31日

岡田 将 & 山本 貴志

[クラシック倶楽部を楽しむ] 本日のプログラム

[NHK BShi 3月20日放送分]

岡田 将 & 山本 貴志

[プログラム1]

 岡田 将 ピアノ・リサイタル

(演奏曲目)
  バッハ フランス風序曲 ロ短調 BWV831

(会場)
  東京オペラシティ リサイタルホール
  (2006年12月12日収録)

[プログラム2]

 山本 貴志 ピアノ・リサイタル

(演奏曲目)
  シューマン 幻想曲 ハ長調 作品17

(会場)
  東京オペラシティ コンサートホール
  (2007年9月9日収録)

[所感]

本日の「クラシック倶楽部を楽しむ」は、昨日に続いてNHKが“クラシック・アラカルト”と称して企画した、岡田将と山本貴志のピアノ・リサイタルのメニューを取り上げます。

日本のクラシック音楽界にはピアニストとして活躍している才能のある若い演奏家が多いことに本当に驚いてしまいます。

このような中で、ますます円熟味を増してきた岡田と若く挑戦的な山本が同時に視聴できるのはとても興味深いことです。

まず、岡田がバッハのフランス風序曲を演奏します。

この曲は、バッハが組曲として作曲していたものをクラビーアのための練習曲第2番として1735年に出版したということです。

岡田は舞台に出てくると立ったままピアノの譜面台に両手を置き、しばし動作を止めます。

そしてピアノに正対して座ってからも、暫く静思しています。

おそらく、岡田のリサイタルの演目がダイナミックレンジの広いものだったのでしょうか、気持ちの切り替えをしているように見えました。

いよいよ1曲目の序曲の演奏が始まります。

荘厳な序奏からフーガに移りますが、テンポは速すぎず音の一つひとつを丁寧に心地よく弾き進んでいきます。

この1曲目の序曲を聴いただけで、岡田がフランス風序曲の全体像をしっかりとらえて演奏しているという安定感が伝わってきました。

続いて、クーラント〜ガボット〜パスピエ〜サラバンド〜ブーレ〜ジーグ〜エコーと演奏されましたが、ガボット、パスピエ及びブーレにおいては第2テーマをピアニッシモで弾いて見せます。

岡田は、この練習曲が2段鍵盤式チェンバロのために作曲されたということを意識して、おそらく上段鍵盤に移るところをピアニッシモで表現していたのではないかと思います。

また、岡田のペダル操作にも特徴があったように感じました。

ジーグやエコーのようにノンペダルで弾き通してしまうものもあれば、ガボット、パスピエ、サラバンドでは適度にペダルを使い、メリハリをつけて旋律に表情を与えていたようなものもありました。

岡田は、チェンバロの練習曲としてフランス風序曲を演奏しただけではなく、もとの管弦楽曲にまで思いを馳せて曲全体を作り上げたかったのではないかと思いました。

このような意味では古典というよりは、岡田流の現代ピアノによる面白いフランス風序曲になっていたと思います。

つぎは、山本のシューマンの幻想曲です。

この曲は、ベートーベンの記念碑の建立の寄付集めのために作曲されたものですが、この時期にはシューマンはクララとの関係で苦悩していたこともあり、ロマンティックな様式を持った代表的な作品である、とテロップが流れていました。

山本は舞台に登場するとすぐに演奏を始めます。

1楽章では、出だしでベートーベンを懐かしむような旋律が流れます。

しかし、自分とクララとの現実に気づき不安を覚えます。

いっそ、この現実を否定して、自分に打ち勝ちたいと思うような気持ちになりますが、やはりクララをいとおしく思って離れられない自分がいることを自覚して、静かに心を閉じてしまいます。

2楽章では、シューマンの周りに、楽しく祭り騒ぎのように踊りまくっている人たちがいるのに、その中にいる自分はひとり取り残されたように孤独感に苛まれています。

自分の孤独をよそに、人々は相変わらず向こうの方で賑やかに踊っています。

シューマンはいきなりその踊りと喧騒の中に飛び込んで、「何故なんだ!僕を孤独にしているものは何なのだ!」と叫んでいます。

3楽章では、ベートーベンのソナタのような旋律が現れます。

シューマンは我にかえって、現実を受け入れなければならないと思います。

やがてショパンのような旋律が現れ、シューマンの現実肯定に拍車を駆け「これで良いのだ!」と納得させてしまうのです。

幻想曲は静かに、安らかに終わります。

山本の演奏を聴いていると、シューマンにとても同情的であるように感じました。

また、山本はシューマンが幻想曲を作曲した年齢に近いこともあり、ロマンティックかつダイナミックに共感して演奏をしていたと思います。

ただ、山本の演奏姿勢については、まだ童顔が残る(というと失礼かもしれませんが)山本であって許されるパーフォーマンスなのではないでしょうか。

テレビでは山本の時には背中を丸めてピアノに顔が付いてしまうのではないかと思うような演奏姿勢が見えてしまいます。

目を閉じて聴くととても素晴らしい演奏なのに、見てしまうと自己陶酔をしているように思えて、少し残念です。

品格のある姿勢で演奏しても十分に音楽を表現できる実力を持っているのですから、そろそろ童顔を卒業しても良いのではないでしょうか。

本日の「クラシック倶楽部」は“アラカルト”という企画で、日本の二人のピアニストを紹介していて、本当に楽しむことができました。

以上、「クラシック倶楽部を楽しむ」でした。
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2008年03月30日

オフェリー・ガイヤール & ガブリエル・リプキン

[クラシック倶楽部を楽しむ] 本日のプログラム

[NHK BShi 3月19日放送分]

オフェリー・ガイヤール & ガブリエル・リプキン

[プログラム1]
オフェリー・ガイヤール チェロ・リサイタル

(演奏曲目)
  バッハ 無伴奏チェロ組曲 第1番 ト長調 BWV1007

(会場)
  王子ホール
  (2006年12月1日収録)

[プログラム2]
ガブリエル・リプキン チェロ・リサイタル

  ピアノ ユリアン・リーム

(演奏曲目)
  ブラームス チェロ・ソナタ 第1番 ホ短調 作品38
  シューベルト アルペジョーネ・ソナタ イ短調D82 から 第2楽章

(会場)
  浜離宮朝日ホール
  (2007年6月1日収録)

[所感]

本日の「クラシック倶楽部を楽しむ」は、NHKがクラシック倶楽部で“クラシック・アラカルト”と称して、オフェリー・ガイヤールとガブリエル・リプキンのチェロ・リサイタルをメニューとして取り上げていました。

ガイヤールは、朱赤の衣装を着けて、その整った面立ちはギリシャ神のミューズのようであり、舞台に登場してチェロを構えると、もうそれだけで絵になってしまうような魅力を備えています。

演奏するのは、バッハの無伴奏チェロ組曲第1番ですが、この曲が作曲された1720年とあまり隔たりのない頃に製作されたチェロを使用しているのではないでしょうか。

ガイヤールのこだわりはそれだけでなく、弦はガット弦を使用し、弓はバロック弓を使用するという念の入れ方です。

プレリュード〜アルマンド〜クーラント〜サラバンド〜メヌエット〜ジーグと弾き進んでいきましたが、ガイヤールのチェロから感じる躍動感というものがサラバンドのようなゆっくりした舞曲からも感じとれました。

ガイヤールは、チェロが奏でる旋律があたかも自分の前にいる宮廷で舞踏をする者たちに共鳴しているかのように、見事に情景描写をしていました。

また、バッハの時代にはチェロがこんな音色を持った楽器だったという証のようなものをガイヤールは聴く者に伝えたかったのかもしれません。

ガット弦をバロック弓が擦る音色は現在のチェロの演奏ではなかなか聴くことはできませんが、低音部ではふくよかであり、高音部ではやや原始的なチェロの音色が18世紀の宮廷舞踏の世界に何の抵抗もなく聴衆を導いていったのではないでしょうか。

ガイヤールは、ある意味では非常に挑戦的なチェリストで、バッハの古典的演奏形式を取り入れながら、新しいリズミカルなバッハを追及しているのではないかと感じました。

さて、アラカルトと称して、次のメニューにはガブリエル・リプキンが載っています。

リプキンについては、このブログでも2月19日放送分でドビュッシーのチェロ・ソナタとフランクのバイオリン・ソナタを取り上げましたが、同じ日に演奏されて放送されなかったブラームスのチェロ・ソナタ第1番とシューベルトのアルペジョーネ・ソナタの第2楽章がメニューになっています。

リプキンの演奏のテクニックの完璧さと音楽性の豊かさは、すでに2月19日放送分で十分に堪能できましたので、ブラームスをどのように演奏してくれるかに興味がありました。

ブラームスが30代はじめに3年かかって作曲したチェロ・ソナタ第1番は、その間に母親の死に直面し、曲自体が非常に哀愁を帯びたものになっているとテロップが流れていました。

そういえば、3楽章形式の第1番ですがすべての楽章は短調が基調になっています。

リプキンは弾き始める前に暫く黙祷します。

1楽章の冒頭で、リプキンは哀愁の音色で印象的な旋律を弾きます。

さすがにリプキンです。

聴衆は一気にリプキンの世界に導かれていきます。

ブラームスの憂愁と孤独感がリプキンのチェロによって輪郭をはっきりとさせてきます。

やがて慟哭の悲しみで激しく胸が揺さぶられますが、静かな落ち着きを取り戻します。

1楽章が終わると、思わず会場から拍手が沸き起こってしまうくらい、聴衆を虜にしてしまいました。

2楽章になると、憂愁を帯びながらも3拍子のやや軽快なリズムの出現によりブラームスの安らぎが表現されます。

リプキンは、ブラームスにも癒される者がいたのではないかというように演奏します。

そして3楽章になると、バッハを思わせるフーガの旋律が出現します。

ここではリプキンとピアノのリームとの駆け引きが実に見事です。

ブラームスは、3楽章で自分の憂愁の念や孤独感は若さゆえの勲章のようなものだ、と割り切ったのかもしれません。

リプキンとリームが、あたかも心の葛藤を2分して語っているようでした。

リプキンは、若き日のブラームスの心の内面と性格を巧みに物語っていたように思いました。

リプキンはもう1曲(アンコール?)、シューベルトのアルペジョーネ・ソナタの第2楽章を演奏しましたが、意識的にあくまでも静かに、深い音色でという弾き方に専念したため、リプキンの激しく心を揺さぶる音色がなく、やや冗長的に聴こえてしまったように思いました。

本日の「クラシック倶楽部」は“アラカルト”という企画でしたが、結局全メニューの品を食べて満足してしまいました。

以上、「クラシック倶楽部を楽しむ」でした。
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2008年03月26日

東京佼成ウインドオーケストラ

[クラシック倶楽部を楽しむ] 本日のプログラム

[NHK BShi 3月18日放送分]

東京佼成ウインドオーケストラ 演奏会

  指揮 下野竜也

(演奏曲目)

  モーツアルト セレナーデ 変ロ長調 K361 から
  ホルスト 吹奏楽のための第1組曲 変ホ長調
  ストラヴィンスキー 管楽器のための交響曲

(会場)

  東京・紀尾井ホール
  (2008年2月15日収録)

[所感]

本日の「クラシック倶楽部を楽しむ」は、東京佼成ウインドオーケストラが管楽器アンサンブルによる演奏を聴かせてくれます。

日本では、学校教育の中において、ブラスバンドの果たす役割は大きく、これらのブラスバンドを加えればいわゆる管楽器アンサンブルと呼ばれるグループ活動は世界水準的にも多いのではないかと思います。

しかしながら、管楽器アンサンブルがプロフェッショナルとして活躍しているという例は少なく、東京佼成ウインドオーケストラはその草分け的な存在となっているのではないでしょうか。

さて、演奏曲目の方ですが、管楽器アンサンブルのために作曲された名曲中の名曲を3曲演奏します。

まず1曲目は、モーツアルトのセレナード第10番K361で「グランパルティータ」と言われているものです。

この曲は7楽章編成でできていますが、そのうちの4つの楽章を演奏しました。

1:ラルゴ〜3:アダージョ〜6:主題と変奏〜7:フィナーレの順に演奏されていきます。

途中が省略されたのは、NHKの編集かあるいは最初から4曲しか選曲されなかったのかは分かりません。

管楽器が13本(演奏ではコントラファゴットの代わりにコントラバス)の編成でモーツアルトが作曲したということは、宮廷内というより宮廷の中庭での野外宴会で使われたものかもしれません。

13本の楽器の音域や特性を知り尽くして作曲しているようで、モーツアルトの才能には本当に驚いてしまいます。

下野竜也の指揮による東京佼成ウインドオーケストラは、相当に訓練を積んでいるようで各管楽器パートは持ち味をよく出していたと思います。

ただ、6楽章の主題と変奏については、曲そのものがインパクトに欠けるせいか、退屈で長い楽章という印象を受けてしまいました。

でも、7楽章ではなじみ深い楽しい旋律が出てきて、軽快で楽しいうちに演奏は終わりました。

2曲目はホルストの吹奏楽のための第1組曲です。

「惑星」で有名なホルストが1909年に作曲し、吹奏楽の世界に送り込んだ代表作の一つとなっています。

3楽章構成で、1:シャコンヌ〜2:間奏曲〜3:行進曲のように演奏が進められます。

下野の指揮は曲作りが丁寧で、東京佼成ウインドオーケストラも各パートの楽器が持ち味を生かしたキャッチボールを相互にしながらうまくまとめていたと思います。

特に、第1楽章のシャコンヌでは主題に続く15の変奏がしっかり受け渡しされていて、聴いていて気持ちが良いものでした。

東京佼成ウインドオーケストラの各メンバーは演奏技術では高い水準にあることが証明されたホルストの演奏でした。

第3曲目は、ストラヴィンスキーの管楽器のための交響曲です。

楽器の編成からすると、ピッコロが入っていましたので1920年版の譜面を使っていたのかもしれません。

テロップでは、楽器が会話を交わすように旋律が進むと流れていました。

曲想は、さすがにストラヴィンスキーと思わせる不規則なリズムに乗って踊るような旋律が現れ、各管楽器パートは困難な演奏法とテンポに悩ませられながら演奏を続けなければなりません。

東京佼成ウインドオーケストラのメンバーは下野の棒に合わせて熱演を繰り広げたと思います。

疲れのせいか、楽器の音が荒くざらついていたのが少しだけ気にかかりました。

管楽器だけですと、どうしても楽器に無理をさせて吹きすぎる傾向にあるようです。

でも、この難曲を演奏できるウインドオーケストラが日本にあるということは、日本の吹奏楽界に大きな影響と励みを与え続けるのではないでしょうか。

演奏会数が年間実に100回を超えると紹介されていましたが、どちらかというと体力を使う管楽器ですから、いつも最良のコンディションで楽しい吹奏楽をたくさん聴かせていただきたいと思います。

本日の「クラシック倶楽部」は日本の吹奏楽の草分け、東京佼成ウインドオーケストラが全国の管楽器アンサンブルに対して示したお手本のような演奏で、楽しく聴くことができました。

以上、「クラシック倶楽部を楽しむ」でした。
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2008年03月23日

吉野直子の世界 ハープ五重奏

[クラシック倶楽部を楽しむ] 本日のプログラム

[NHK BShi 3月17日放送分]

吉野直子の世界 ハープ五重奏

(演奏)

  ハープ   吉野 直子
  フルート  佐久間 由美子
  バイオリン 川田 知子
  ビオラ   鈴木 康浩
  チェロ   山本 裕康

(演奏曲目)

  モーツアルト アダージョとロンド K.617
  ピエルネ 自由な変奏と終曲 作品51
  ドビュッシー 子供の領分(サルゼード編)
  ジョリヴェ リノスの歌

(会場)

  東京・JTアートホール アフィニス
  (2008年1月28日収録)

[所感]

本日の「クラシック倶楽部を楽しむ」は、“吉野直子の世界”と題して吉野直子の企画によって吉野とその仲間たちが演奏を披露します。

日本ではハープが独奏楽器としてなかなか根付いていなかったのですが、吉野が17歳のときイスラエルのハープ国際コンクールで優勝を遂げデビューしたときの印象は本当に鮮烈で、ハープに日本のクラシック音楽界で市民権を獲得させるきっかけになったのではないかと思います。

さて、第1曲目はモーツアルトのアダージョとロンドです。

この曲は、モーツアルトの晩年に、目の不自由なグラスハーモニカ奏者のために作曲されたもので、ここではグラスハーモニカのパートをハープが、またオーボエのパートをバイオリンが演奏している、とテロップに流れていました。

グラスハーモニカというのはどんな形をしていて、どのように演奏するのか、見たことがないので分かりませんが、ハープで演奏しても少しも不自然ではないというところが、モーツアルトの妙味なのでしょうか。

アダージョの部分は、荘厳な導入部から軽快な踊りのような旋律に展開していきますが、5人のソリストたちがアンサンブルの具合を確かめるように演奏しているのがとても印象的でした。

ロンドに入ると5人は、「これは結構楽しく演奏できそうだよ。」というような気持になって、心地よく吹く春風の中でお互いにお話を交わしているような雰囲気を作っていました。

2曲目は、ピエルネの“自由な変奏と終曲”です。

ガブリエル・ピエルネはフランスの印象的な作風を持つ作曲家であり、指揮者としても活躍した、とテロップに流れました。

この“自由な変奏と終曲”を聴いていると、モチーフもしっかりしていてピエルネは素晴らしい作曲家だと思いましたが、同時期にラベルやドビュッシーがいたため、作曲家としては目立たず、指揮者としての地位が確立していたようです。

五重奏が始まると、目の前に鮮明に印象派的モチーフが浮かんできます。

フルートとビオラの導入からチェロに弾き継がれる旋律の中に、ふっとモネの描いた“睡蓮”の絵のような情景が浮かび上がってきます。

睡蓮の池はどんよりとした空の下で靄のかかったように紗がかって静かな風景を現わします。

しばらくして、睡蓮の池にどんよりとした空から大粒の雨がぽつぽつと落ちてきます。

雨は霧のようになり降り続けますが、やがて空の雲が割れ、霞に包まれた夕日がぼっと見えるようになります。

ぼっとした夕日は、睡蓮の池の水面にかすかな影を映し出しています。

夕日が沈みかけ、睡蓮の池は夕暮れにさしかかり、カエルや糸トンボなどの小さな生き物たちが夜のとばりを前に活発に動き回る生命の営みの様子が伝わってきます。

そして、睡蓮の池はすっかりと闇に包まれていき、生命あるものはすべて眠りに就くのです。

と、本当に印象派の絵の中に吸い込まれて、移りゆく情景を見ているようで、素晴らしい演奏でした。

3曲目は、同じ印象派であるドビュッシーの“子供の領分”の演奏でした。

フランスのハーピストで作曲家でもあるカルロス・サルゼードが、ドビュッシーのピアノ組曲を編曲したものであるとテロップに流れていました。

楽器の構成は、佐久間のフルート、山本のチェロ、吉野のハープという三重奏曲になっていました。

組曲の6曲が全曲演奏されましたが、どの曲も副題にふさわしい演奏表現で楽しく仕上げられていたと思います。

特に、1番目の“グラドゥス・アド・パルナッスム博士”では、ハープを子供のピアノのお稽古に見立てて、その横で先生たちをフルートとチェロが演じ、いろいろおしゃべりしている様子が見えてとても面白かったです。

また、“象のこもり歌”で聴かせた山本のやわらかく透き通るようなチェロの響きは、この人の演奏をソロリサイタルで聴いてみたいと思わせるものでした。

最後は、ジョリヴェの“リノスの歌”です。

この曲は、アンドレ・ジョリヴェが第2次世界大戦末期に学生の試験のために作曲した作品で、古代ギリシャの韻を踏む旋律を持っている、とテロップに流れていました。

リノスというのは古代ギリシャの半神で、竪琴の名手だったようです。

そのリノスが、こともあろうにギリシャ神きっての力持ちのヘラクレスに竪琴を教えることになったというのですから大変です。

まず、リノスとヘラクレスが天空上に登場です。

リノスがヘラクレスに向って、「最初はゆっくり音を出す練習ですよ。」と手本を示します。

ヘラクレスは力にまかせて激しく竪琴をかき鳴らします。

リノスが「そうではありません。このように。」とまた演奏して見せます。

ヘラクレスは、やはり激しくかきむしるだけです。

リノスは「それでは軽快なテンポのところを弾いてみましょう。」と言って手本を示します。

ヘラクレスはテンポについていけないで遅く弾いてしまいます。

リノスがあきれ顔で「あなたは駄目ですねぇ。ちゃんと私の言うことを聞いてください。」(と言って思わずヘラクレスを殴ったのかどうか?)と言うビオラの穏やかな音色が聴こえます。

ヘラクレスはすっかり頭にきて、「もうこんなことやっていられないよ!」とわめき散らした揚句、竪琴でリノスを殴り殺してしまったのです。

吉野がハープのボディを叩く音が入りました。(ヘラクレスがとうとうやってしまったのです。)

と、こんなふうに聴こえました。

この曲では、何と言ってもフルートの佐久間由美子の演奏が光り輝いていました。

吉野は、自分が前に出ることなく、集まった5人の素晴らしいアーティストたちのアシスト役としてアンサンブルを見事にまとめていたと感じました。

この5人のアンサンブルは非常に語り上手で、音楽づくりに優れていますので、これからもいろいろなレパートリーの演奏を聴かせてほしいと思いました。

本日の「クラシック倶楽部」はハープの吉野直子が企画したプログラムでしたが、どれをとっても本当に楽しめる演奏でした。

以上、「クラシック倶楽部を楽しむ」でした。
posted by クラシックマ at 15:47| Comment(0) | TrackBack(0) | クラシック倶楽部を楽しむ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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