2008年05月27日

諏訪内晶子 ニコラ・アンゲリッシュ デュオ・リサイタル

[クラシック倶楽部を楽しむ] 本日のプログラム

[NHK BShi 5月20日放送分]

諏訪内晶子 ニコラ・アンゲリッシュ デュオ・リサイタル

(演奏曲目)

  バイオリン・ソナタ 変ロ長調 K.454 から ( モーツァルト作曲 )
      第1楽章, 第3楽章
  バイオリン・ソナタ ( ドビュッシー作曲 )
  バイオリン・ソナタ 第3番 ニ短調 作品108 ( ブラームス作曲 )

(演奏)

  バイオリン : 諏訪内 晶子
  ピアノ   : ニコラ・アンゲリッシュ

 [ 収録: 2008年4月10日, サントリーホール ]

[所感]

ごきげんよう。「クラシック倶楽部を楽しむ」のクラシックマです。

本日の「クラシック倶楽部」は、バイオリンの諏訪内晶子とピアノのニコラ・アンゲリッシュによるデュオ・コンサートです。

諏訪内晶子といえば、1990年に18歳の時、最年少でチャイコフスキー国際コンクールを制覇した後、センセーショナルなもてはやされ方を避けるかのように日本での演奏活動を約5年間休止し、アメリカやドイツで音楽への造詣を深め技術の更なる研鑽に向かい合うという姿勢で大事な時期を過ごしたことが印象に残っているところです。

また、ニコラ・アンゲリッシュはアメリカ生まれで諏訪内より2歳ほど年上ですが、フランスでの修行時期が長く、多くのオーディションを経たのち、現在室内楽奏者やソリストとして活躍中です。

諏訪内とアンゲリッシュは現在、フランスを拠点としてデュオを組んで演奏活動を広げているとのことですが、ともに若い時期に華々しく期待されていた二人が、30歳代半ばになってどのような音楽の世界を作り上げてくれるのかとても楽しみです。

まず、最初はモーツアルトのバイオリンソナタ第40番の演奏ですが、NHKの編集によって緩徐楽章である第2楽章がカットされてしまって、演奏者にとっては不幸なことです。

それでも、現在の諏訪内がモーツアルトをどのように演奏するのかは興味のあるところです。

聴いていると、やはり只者ではない素晴らしい演奏で、モーツアルトの音楽で物語を表現してしまうことが明らかになりました。

第1楽章では、荘厳なラルゴの序奏に続いて、少年が軽快なテンポで歩きながらあちこちに寄り道をして、時には道端に飛んでいる蝶を追いかけたりしているような情景が浮かび上がってきました。

また、第3楽章では、まだ若い恋人たちが二人で楽しそうにおしゃべりをしている様子がバイオリンとピアノによって機微に表現されていて、フラゴナールの絵になってしまいそうでした。

諏訪内がモーツアルトをこんなふうに演奏して聴かせてくれるなんて、素晴らしいバイオリニストに成長しているのだなと感じてしまいました。

第2楽章が聴けなかったのは本当に残念です。

次は、ドビュッシーのバイオリン・ソナタです。

ドビュッシーが死の前年の1917年に作曲した全創作の最後の作品となったバイオリン・ソナタということですが、重い病の中にあって書かれた作品だけあって作曲者の苦悩のようなものが滲み出ているようです。

第1曲:アレグロ・ヴィーヴォでは、重苦しいピアノの旋律が響き、バイオリンもG線でグリッサンドを使い病の中にいるドビュッシーのうめき声が聞こえるようです。

また、いきなりバイオリンがE線に飛び、その旋律は悲痛な叫び声を表現しているようです。

病の中でドビュッシーの苦痛な闘病生活が浮き出てくるように感じました。

第2曲:間奏曲では、何かを思い出したように急にゴソゴソと譜面の山から探し物を始めます。

途中で譜面の間に挟まっていた懐かしい友人からの手紙を見つけて、しばらくは探し物の手を休め感慨に耽っています。

また、探し物を始めて「あぁ、これだ。これを何とかしなくちゃ。」と書きかけの譜面を手にします。

第3曲:終曲では、作りかけの作品を仕上げようと、病の肉体に鞭打ってがむしゃらに創作を続けますが、疲労が重なり途中で休み休みしながら、やっと作品を完成させて終わりを迎えます。

ドビュッシーの最後の作品という先入観からか、本来のドビュッシーの紗がかった風景描写はあまり感じられず、諏訪内とアンゲリッシュの演奏は妙に説得力を持っていて上記のように聴こえてしまいました。

最後は、ブラームスのバイオリン・ソナタ第3番です。

この曲は、ブラームスが50歳代半ばの1888年に作曲されたもので、ブラームスの周りでは多くの親友が亡くなっていて、内省的な性格のブラームスがより一層暗さを増してくる時期に当たる頃の作品となっています。

ですから、バイオリン・ソナタ第3番はこれらの逝ってしまった友人たちに対する鎮魂歌のように聴こえてきます。

第1楽章:多くの友人を失った故に、ブラームスの複雑な心の葛藤と憂鬱さを表す旋律が響き渡ります。

第2楽章:バイオリンのG線が奏でる心を癒すような旋律は、友人たちの死に対する追悼を表しているのではないでしょうか。

第3楽章:棺が運ばれて墓地でお葬式を行っているような情景描写が浮かびます。

第4楽章:友人たちの魂に神の栄光あれ、天が裂けて魂は昇り、天上の安らかな世界に導かれよ、という鎮魂の旋律が流れて曲は終わります。

ブラームスの演奏においても、諏訪内は本当に語り上手で、聴く者の心の奥深くに話しかけるように演奏を続けました。

デビューから15年余を経た諏訪内の演奏を3曲聴いてきましたが、聴いている側に様々な物語を感じさせてしまう説得力のある演奏法には驚くべきものがありました。

これは諏訪内が若い時代の国内演奏を封印した意味の答えなのかもしれません。

本日の「クラシック倶楽部」では、バイオリンの諏訪内晶子とピアノのニコラ・アンゲリッシュのデュオ・アンサンブルによって、音楽を媒体としていろいろな物語を聴くという素晴らしい体験を楽しめたと思います。

以上、「クラシック倶楽部を楽しむ」でした。
posted by クラシックマ at 10:58| Comment(0) | TrackBack(0) | クラシック倶楽部を楽しむ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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