2008年05月07日

ギル・シャハム & イザベル・ファウスト

[クラシック倶楽部を楽しむ] 本日のプログラム

[NHK BShi 4月29日放送分]

ギル・シャハム & イザベル・ファウスト

<プログラム1>

  バイオリン ギル・シャハム
  ピアノ   江口 玲

(演奏曲目)

  モーツアルト バイオリン・ソナタ ニ長調 K.306

(会場)

  紀尾井ホール
  (2007年5月25日収録)

<プログラム2>

  バイオリン イザベル・ファウスト
  ピアノ   ジルケ・アーヴェンハウス

(演奏曲目)

  フランク バイオリン・ソナタ イ長調

(会場)

  王子ホール
  (2007年11月12日収録)

[所感]

ごきげんよう。「クラシック倶楽部を楽しむ」のクラシックマです。

本日の「クラシック倶楽部」は、アラカルトで、ギル・シャハムとイザベル・ファウストの各バイオリン・リサイタルの2本立てです。

ギル・シャハムは1971年生まれ、イザベル・ファウストは1972年生まれ、と紹介されていましたから、両者ともにほぼ同年代で活躍するバイオリニストといえます。

2人のプロフィールを見ていると、ギル・シャハムはイスラエル国内で早くから頭角を現し、オーディションを経ることなく才能が認められ、10歳のときにはイスラエル・フィルハーモニー等とすでに共演してデビューを果たしているとのことです。

その後、アメリカに活躍の場を広げると共に研鑽を積み、音楽以外の分野でも幅広い教養を身につけて、今日、演奏家として確固たる地位を築いているというどちらかというと天才型のタイプのように思います。

また、イザベル・ファウストは音楽の殿堂ドイツを基盤として、15歳の時にレオポルト・モーツアルト国際コンクール、21歳でパガニーニ国際コンクールをそれぞれ制覇するという輝かしいオーディション歴を持っており、いわば、オーディションを足掛かりにして演奏家として認められて、現代の寵児的道のりを歩んできたように思います。

さて、最初に、ギル・シャハムがモーツアルトのバイオリン・ソナタ第30番を演奏します。

この曲は、モーツアルトがバイオリンソナタに対して “バイオリン伴奏付きピアノ・ソナタ”という概念を打ち破り、“ピアノとバイオリンのための二重奏曲”という発想の転換を図った時期で1778年に作られたというようなテロップが流れました。

そんな事を考えながら聴くと、確かにこのバイオリン・ソナタは、主役がバイオリンと言いきれないところがまだあるように思えました。

それは曲全体を通してみると、ピアノがモーツアルトの旋律を弾いていき、バイオリンが引っ張られているように感じるところがあるからではないでしょうか。

しかし、それだけで終わらせなかったというのが天才バイオリニスト、シャハムの凄いところではないでしょうか。

シャハムは、モーツアルトが創作時に意図していた“二重奏”という論理的解釈を、自らのバイオリンで演奏して見せてくれたような気がします。

ピアノに絡むバイオリンの旋律が、シャハムによって生き生きと浮き立っていて、「あっ、これは確かにモーツアルトのバイオリン!」と聴く者を納得させてしまうようでした。

どちらかというと、バイオリンにとっては表現力を発揮するのが難しいモーツアルトの作品でしたが、第3楽章のカデンツアなどでは、シャハムは「モーツアルトはこんなに楽しいバイオリン曲も作っているよ!」と言って歌っているようでした。

江口玲のピアノもまた、シャハムのバイオリンに劣らず豊かに歌っており、この二人の演奏はピアノをオーケストラに見立てて、バイオリン・コンチェルトのように思えるほど素晴らしい構成づくりをしていたと思います。

シャハムと江口は本当に息の合ったアンサンブルを作り上げていると感じてしまいました。

また、シャハムはモーツアルトのバイオリン・ソナタを1曲演奏しただけなのに、聴く者をシャハムのバイオリンの虜にしてしまうような技量と深い音楽性を持っている演奏家であることが明らかにされたような気がしました。

次は、イザベル・ファウストがフランクのバイオリン・ソナタを演奏します。

フランクのバイオリン・ソナタは、フランクが64歳のときの1886年に作曲されたとテロップで紹介されていましたが、前述のモーツアルトのバイオリン・ソナタが1778年(22歳の時)に作曲された時から100年以上も後のことになります。

音楽の聴くということは、100年スパンで知らないうちに時空を飛び越している、ということに気がついて面白いものだと思いました。

ですから、ファウストの演奏するフランクのバイオリン・ソナタは、やっと形の出来上がったモーツアルトのバイオリンソナタよりは、困難な演奏法や音楽性が要求されるのは当然でしょう。

ところが、フランクのバイオリンソナタを聴いていると、第1楽章の第2主題にみられるようにピアノの役割が極めて重要で、必ずしもバイオリンが主役の作品ではないように感じるところがありました。

不思議なことに、前述のモーツアルトが“ピアノとバイオリンのための二重奏”と言ったことと共通性を感じてしまいます。

ファウストのバイオリンは、ジルケ・アーヴェンハウスのピアノと絶妙に絡み合いながらモーツアルトから100年余を経た作曲家フランクの思いに深く入り込んで、この音色でなければならないというような旋律を作り上げていきます。

第3楽章のピアノの憂鬱な導入旋律に続く、バイオリンのカデンツアは会場をファウストの世界に誘い込んでしまうようです。

第4楽章では、すべての不安定さから解き放たれたような輝かしいロンド形式の旋律を、ファウストのバイオリンとアーヴェンハウスのピアノがダイナミックに演奏していましたが、やはりファウストのバイオリンには華があり、聴かせどころをしっかりと心得ているように思いました。

ファウストのフランクを聴いて、テクニックの正確なことと作品に対する思い込みの深さの素晴らしさに感心しましたが、フランクは私にとっては分かりずらい曲でしたので、ファウストの別の曲目の演奏をまた聴いてみたいと思いました。

本日の「クラシック倶楽部」では、ギル・シャハムとイザベル・ファウストの100年余という時空を経た2つのバイオリン・ソナタの演奏を聴きましたが、どこか共通した曲想があり、とても面白く思えました。

また、どちらのバイオリン・ソナタも江口玲とジルケ・アーヴェンハウスという2人の素晴らしいピアニストと共に成り立っていた演奏だったと思います。

以上、「クラシック倶楽部を楽しむ」でした。
posted by クラシックマ at 02:16| Comment(0) | TrackBack(0) | クラシック倶楽部を楽しむ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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