2008年05月03日

アリス・紗良・オット ピアノ・リサイタル

[クラシック倶楽部を楽しむ] 本日のプログラム

[NHK BShi 4月25日放送分]

アリス・紗良・オット ピアノ・リサイタル

(演奏曲目)

  シューマン ロマンス 第2番 嬰ヘ長調 作品28 第2
  ベートーベン ロンド・ア・カプリッチョ「なくした小銭への怒り」作品129
  リスト ハンガリー狂詩曲 第2番 嬰ハ短調
  リスト 慰め 第3番 変ニ長調

(会場)

  三鷹市芸術文化センター 風のホール
  (2006年11月22日収録)

[所感]

皆さんお変わりありませんか。支配人のクラシックマです。

本日の「クラシック倶楽部を楽しむ」は、「クラシック倶楽部」のアラカルトからアリス・紗良・オットのピアノ・リサイタルを取り上げます。

アリス・紗良・オットは1988年生まれといいますから、このリサイタルのときには18歳になるかどうかというところです。

テロップでは4歳のころから演奏会を開催していたというような紹介がありましたので、驚くべき天分を持ってこの世に現れたとしか言いようがありません。

日本でデビューしたのは2004年(16歳)で、中村紘子の招きによって実現したそうです。

本日、オットが演奏する曲はいずれも小品ながら、シューマン、ベートーベン及びリストと多彩です。

さて、オットが舞台に登場します。

朱色のドレスを着て、黒髪が胸のあたりまで長く、まさに美形のピアニストです。

まず1曲目のシューマンのロマンス作品28−2を演奏し始めます。

オットは、全体的に音の強さを抑えながら恋人同士が静かに優しく会話をしているような旋律で歌います。

演奏者のオットが18歳の乙女ということを忘れさせるような大人のロマンスです。

シューマンが云々というのではなく、オットが心の中に自分で描いた絵や創作した物語をそのまま音楽に乗せて演奏しているように思えました。

2曲目のベートーベンのロンド・ア・カプリッチョも同じで、曲の副題が表わす「なくした小銭への怒り」を客観的に見て面白がっているのではなく、オット自身が当事者で「何で見つからないのだろう!」とイライラしているように演奏していて、とても共感を覚えました。

しかし、何と言ってもオットの聴かせどころは3曲目のリストのハンガリー狂詩曲第2番ではなかったかと思います。

かつて、超絶技巧のリストの曲を演奏するジョルジ・シフラに対して「指が何本あってどのように動いているのか視覚でとらえるのは難しい。」という論評があったそうですが、オットの演奏もしかりで、超高速撮影でもしない限りオットの指が何本あるのか分からないくらい凄い演奏ではなかったでしょうか。

フォルテッシモのところになると、椅子の上で飛び跳ねてしまいそうに激しく全身を使って演奏する姿はピアノと格闘をしているようでした。

それでいて、曲想が変わって次のフレーズに移るところなど、滑らかな音のつながりで進行して、本当に美しく聴かせてしまいます。

美形のオットですが、極めて挑戦的で、攻撃的でもあり、若々しさに溢れていてとても気持ちの良い演奏ではなかったかと思います。

アンコールに、リストの「慰め」第3番を演奏しましたが、自分に言い聞かせるような演奏で、聴衆を自分の世界に引き込むような魅力がありました。

さて、アリス・紗良・オットが18歳にして、こんなにも素晴らしい演奏を聴かせてくれたので、これから彼女に何を望めば良いのでしょうか。

本日はすべてが小品の演奏でしたので、機会があれば協奏曲などの大曲を聴いてみたいと思います。

また、今の彼女はどちらかというと自由奔放ですので、一歩引いて客観的に作品を見るという余裕がないように感じました。

さらに良い指導を受け研鑽を積みながら、自分の描いた絵や創作した物語に、文化や歴史的な背景を付け加えていくともっと音楽性が高まるのではないでしょうか。

最後に、彼女には、もうこれ以上のオーディション体験は必要ないのではないかと考えさせられてしまいました。

本日の「クラシック倶楽部」は、アリス・紗良・オットのピアノの天才的な演奏に思わず感動してしまったとともに、このように素直な演奏家が素晴らしい音楽体験を積んで、まっすぐに伸びていってほしいと感じました。

以上、「クラシック倶楽部を楽しむ」でした。
posted by クラシックマ at 03:04| Comment(0) | TrackBack(0) | クラシック倶楽部を楽しむ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。