2008年04月22日

庄司紗矢香 & ライナー・ホーネック

[クラシック倶楽部を楽しむ] 本日のプログラム

[NHK BShi 4月15日放送分]

庄司 紗矢香 & ライナー・ホーネック バイオリン・リサイタル

<プログラム1>

  バイオリン 庄司 紗矢香
  ピアノ   イタマール・ゴラン

(演奏曲目)

  ショスタコーヴィチ バイオリン・ソナタ 作品134から
               第1楽章、第3楽章
  シューマン ロマンス イ長調 作品94第2

(会場)

  サントリーホール
  (2005年11月29日収録)

<プログラム2>

  バイオリン ライナー・ホーネック
  ピアノ   野平 一郎

(演奏曲目)

  リヒャルト・シュトラウス バイオリン・ソナタ 変ホ長調 作品18から
                  第1楽章、第3楽章

(会場)

  浜離宮朝日ホール
  (2005年9月29日収録)

[所感]

本日の「クラシック倶楽部を楽しむ」は、NHKの「クラシック倶楽部」がクラシック・アラカルトと称して企画した、庄司紗矢香とライナー・ホーネックの2つのバイオリン・リサイタルです。

まず、<プログラム1>の1曲目は庄司紗矢香がショスタコーヴィチのバイオリン・ソナタ作品134を演奏します。

この曲は、1969年にショスタコーヴィチがオイストラフの60歳の誕生日を祝って作曲し、高度なテクニックが要求される難曲で、初演の時のピアノパートはリヒテルが担当して共演されたとテロップ説明がありました。

庄司は、サーモンピンクと上半身に花模様の刺繍がしてある薄いパフスリーブのドレスを重ね着して舞台に登場し、本当に華のあるバイオリニストに成長していることを予感させます。

庄司が第1楽章を弾き始めますが、オイストラフの誕生日に献呈された曲にしては、全体的に随分と暗い曲です。

ショスタコーヴィチもオイストラフも旧ソ連の時代の独裁体制というものに一抹の不安を持ちつつ共感していたのかも知れません。

第2楽章がNHKによりカットされていて、いきなり第3楽章になりました。

第3楽章は、ソ連の体制が何か強い力によって大きく変革することを予言するような鋭い旋律が現れます。

ショスタコーヴィチは、やがてペレストロイカのような動きがあってソ連邦が崩壊することを感じていたのかも知れません。

イタマール・ゴランの迫力あるピアノ・ソロと、それに続く庄司のダイナミックなバイオリン・ソロは、まさに来るべき新しいソ連を熱望する叫びのように聞こえてきます。

しかし、現体制下での現実に目を向けるとき、ショスタコーヴィチは自らの立場をも含めて、すべてを肯定して曲を終わらせなければなりませんでした。

演奏が終わるとともに舞台の照明はすべて落とされ、ホール全体が真っ暗になります。

象徴的な舞台演出が加わり、ショスタコーヴィチの作品を一段と厚みのある音楽にしていたのではないでしょうか。

庄司の2曲目はシューマンのロマンス作品94でしたが、何故こんなところに挟み込むような編集をしたのか、NHKのセンスに疑念を抱いてしまいました。

きっと、あまりにもシリアスなショスタコーヴィチの作品の後のお口直しとでも思ったのでしょうか。

ショスタコーヴィチだけで止めておく方が絶対に良かったと思います。

これは庄司の演奏のせいではありませんので、NHKに猛省をお願いすることにしましょう。

次の<プログラム2>は、ライナー・ホーネックがリヒャルト・シュトラウスのバイオリン・ソナタ作品18を演奏します。

ホーネックは、1961年オーストリア生まれで、92年からはウイーン・フィルハーモニーのコンサートマスターとなり、室内楽の分野でも活躍している、とテロップ紹介がされていました。

また、リヒャルト・シュトラウスのバイオリン・ソナタについても、24歳の時に作曲された唯一のバイオリン・ソナタで、色彩感覚に富んでいて、この後の作品に対する作曲者の一方ならぬ片鱗を示すものである、とテロップ説明がされていました。

第1楽章は、40代半ばに差しかかろうとしているホーネックが、若き日のシュトラウスにふさわしく、ロマンティックで活気に満ちあふれた旋律を作り上げていました。

この曲も第2楽章がNHKによって編集カットされ、第3楽章になります。

第3楽章は、野平一郎のピアノが際立って素晴らしく、ホーネックのバイオリンと会話を進めていくように聴こえます。

ある時にはピアノがバイオリンを先導するようなところもあり、野平のピアノは鮮烈に冴えわたっていました。

ホーネックのバイオリンは決して派手ではないのですが、旋律が澄んでいて包容力に富んでいる名演であったと思います。

さて、本日の「クラシック倶楽部」では、庄司紗矢香とライナー・ホーネックという若手と円熟期に入った2人のバイオリニストを取り上げていましたが、庄司の華に対して、ホーネックの堅実という対照的な演奏が印象に残りました。

ここでNHKに注文を一つ付けておきたいと思います。

ショスタコーヴィチもシュトラウスも、NHKの編集という名のもとに第2楽章をカットして放映されていたことについてです。

54分間という時間を大事にするあまり、演奏作品の途中をカットしてしまう場合は極めて慎重な選択をしていただきたいと思います。

作曲家の作品は、いわば“生もの”です。

演奏家は、時と空間を経たその“生もの”を如何に生き生きと表現するかという努力をしているはずです。

本日のNHKの編集の仕方は、生きて泳いでいる鯛を、三枚に仕上げて、身の部分だけを刺身にして出しているようで、せっかくの演奏家の努力を台無しにしているように感じてしまいます。

これは、作曲家にとっても演奏家にとっても気の毒で不幸なことです。

「クラシック倶楽部」がこれからも視聴者に質の良い企画をしていくよう猛省をお願いします。

以上、「クラシック倶楽部を楽しむ」でした。
posted by クラシックマ at 11:14| Comment(0) | TrackBack(0) | クラシック倶楽部を楽しむ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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