2008年04月18日

ボリス・ベレゾフスキー ピアノ・リサイタル

[クラシック倶楽部を楽しむ] 本日のプログラム

[NHK BShi 4月11日放送分]

ボリス・ベレゾフスキー ピアノ・リサイタル

(演奏曲目)

  メトネル 「おとぎ話」から
          ホ短調 作品34 第2
          変ロ短調 作品20 第1
          「鏡」ロ短調 作品20 第2
          変ホ長調 作品26 第2
          「エルフの踊り」ト短調 作品48 第2
          「ロシアのおとぎ話」ヘ短調 作品42 第1
  シューマン ダヴィッド同盟舞曲集 作品6

(会場)

  フィリアホール
  (2008年3月8日収録)

[所感]

本日の「クラシック倶楽部を楽しむ」は、ボリス・ベレゾフスキーのピアノ・リサイタルでメトネルとシューマンの作品を演奏します。

メトネル(1880年−1951年)はロシアの作曲家で、「おとぎ話」は30曲以上も作られた、とテロップ説明がありました。

メトネルの作品については、私はあまり聴くことがありませんでしたが、ベレゾフスキーのような実力派の演奏家によって日本で紹介されるメトネルは、ロシアでは作曲家としてかなり重要な役割を果たしていたのかも知れません。

ベレゾフスキーの演奏を聴いていると「おとぎ話」というのはフェアリーのような“おとぎの国”での出来事を描写しているのではなく、メトネルが日常的な出来事を「ちょっと聞いてよ!」と言って風刺的に語っているような感じがしました。

1曲目の作品34第2:絶えず波のうねりがある海に船が出帆していく情景で、作者の穏やかならぬ人生。

2曲目の作品20第1:村人たちが平和に暮らしている何げない風景で、革命前への回帰。

3曲目の「鐘」作品20第2:人々が忙しそうに動き回る。鐘の音がせわしく鳴り渡る。鐘の音に操られて人々が動き回っている様子。おそらく前の作品20第1(過去)の対比(現在)となっているもの。

4曲目の作品26第2:工場の中でたくさんの部品が組み立てられてロボット(兵器?)が作られている。

5曲目の「エルフの踊り」作品48第2:何か目に見えないような糸によって操られ、人々が力なく踊っている様子。

6曲目の「ロシアのおとぎ話」作品42第1:ロシア帝政が革命によって倒れ、新しい時代になったが、現体制に対する漠然とした不安。

ベレゾフスキーは、メトネルの良き理解者として「おとぎ話」をピアノの旋律で大胆かつ明瞭に聴衆に語りかけてきたのです。

30曲以上もある「おとぎ話」の他の曲も、ベレゾフスキーの演奏でもっと聴いてみたいと思いました。

さて次は、シューマンの「ダヴィッド同盟舞曲集」です。

この曲はシューマンが27歳の時に作曲した18の作品からなるもので、「ダヴィッド同盟」とは架空の団体名で新しい理想の音楽を広めようとしてつけられたものである、とテロップ説明がありました。

「ダヴィッド同盟舞曲集」は、シューマンの性格の2面性を“ジキルとハイド”的に表して音楽の中で論争していくというような形になっています。

シューマンは衝動的で行動力のある人物像として“フロレスタン”を、また、冷静沈着で思慮深い人物像として“オイゼビウス”を登場させます。

そして、この作品の18曲にフロレスタンの“F”とオイゼビウスの”E”という符号をつけて曲の性格を表現しようと試みています。

<第1部>
第1曲 活発に(FとE)/第2曲 心をこめて(E)/第3曲 ユーモアを持って(F)/第4曲 辛抱しきれず(F)〜副題とは裏腹な美しい旋律〜/第5曲 単純に(E)〜くどくど繰り返す〜/第6曲 きわめて速く(F)〜不安定な不気味さのある旋律〜/第7曲 速くなく(E)〜悲しく切ない者を慰めるような旋律〜/第8曲 はつらつと(F)/第9曲 活発に(サインなし)

<第2部>
第10曲 バラード風に、きわめて速く(F)/第11曲 単純に(E)〜同じ旋律の繰り返し〜/第12曲 ユーモアをもって(F)/第13曲 野性的に、愉快に(FとE)〜はっきり性格の違う2つの旋律が現れる〜/第14曲 優しく歌うように(E)/第15曲 はつらつと(FとE)/第16曲 快いユーモアをもって(FとE)/第17曲 遠くからのように(E)/第18曲 速くなく(サインなし)

ベレゾフスキーは、第1部と第2部の区分けをして演奏しませんでしたが、大きな体で演奏される繊細なピアノの音色がフロレスタンとオイゼビウスの性格を明瞭に表現していたのではないかと思います。

今までは、ベレゾフスキーというと、どちらかというと豪快で情熱的な演奏の方が強く印象に残っていたのですが、いよいよ円熟期にさしかかったベレゾフスキーの真価が表れてきたと感じさせる演奏でした。

なお、「ダヴィッド同盟舞曲集」の冒頭には、/いつの世にも/喜びは悲しみと共にある/喜びにはひかえめであれ/悲しみには勇気をもって備えよ/、という古い格言が書かれているということですが、ベレゾフスキーの繊細で、ピアニッシモの多い演奏は、この冒頭の格言を意識していたようにも思えました。

ベレゾフスキーはあるインタビューの中で「人の好みはわからないから、自分の感じるまま自分のために演奏する。その演奏が人に反応を起こさせて、感情を引き出すようなピアニストでありたい。」と話していたということですが、1990年のチャイコフスキー・コンクールで衝撃的な優勝を遂げて以来17年の歳月の中で、素晴らしい音楽体験を積み重ねてきているのだと思います。

これからまた10年たった時のベレゾフスキーに期待は大きく膨らみます。

本日の「クラシック倶楽部」は、ボリス・ベレゾフスキーが演奏するメトネルのロシアン・ピアニズムの世界とシューマンの2面性を表現する小品集によって、ベレゾフスキーの真価を見せつけられたように思います。

以上、「クラシック倶楽部を楽しむ」でした。
posted by クラシックマ at 10:44| Comment(0) | TrackBack(0) | クラシック倶楽部を楽しむ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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