2008年04月17日

マルティン・シュタットフェルト ピアノ・リサイタル

[クラシック倶楽部を楽しむ] 本日のプログラム

[NHK BShi 4月10日放送分]

マルティン・シュタットフェルト ピアノ・リサイタル

(演奏曲目)

  バッハ ゴールトベルク変奏曲 BWV988 から
         アリア
         第 1変奏 第 2変奏 第 3変奏 第 4変奏
         第 5変奏 第 6変奏 第 7変奏 第 8変奏
         第 9変奏 第11変奏 第14変奏 第15変奏
         第16変奏 第17変奏 第18変奏
         第23変奏 第24変奏 第25変奏 第26変奏
         第27変奏 第28変奏 第29変奏 第30変奏
         アリア

(会場)

  東京・すみだトリフォニーホール
  (2006年3月9日収録)

[所感]

本日の「クラシック倶楽部を楽しむ」は、マルティン・シュタットフェルトのピアノ・リサイタルでバッハのゴールトベルク変奏曲が演奏されます。

2002年に22歳の若さでJ.S.バッハコンクールで優勝したシュタットフェルトは、ドイツ生まれであることから世界中で注目を浴びることとなったようです。

しかも、ゴールトベルク変奏曲は、コンクールで演奏された曲でもあり、シュタットフェルトがバッハの演奏家として世界的に認められることとなった原点に当たるものです。

ゴールトベルク変奏曲は、バッハが2段鍵盤式チェンバロのために作曲した全4巻からなる「クラヴィーア練習曲」の第4巻に当たるもので1742年に出版されました。

正式名は「2段鍵盤付きクラヴィチェンバロのためのアリアと種々の変奏」ですが、バッハが音楽を教えていたゴールトベルクが不眠症のカイザーリンク伯爵のためにこの曲を演奏したという逸話から「ゴールトベルク変奏曲」と呼ばれるようになったと言われています。

この曲がピアノで弾かれるようになったのは、20世紀後半に新進気鋭のピアニストであったグレン・グールドがデビューアルバムとして1955年に発表したことに始まり、以降、多くの演奏家にピアノで演奏されるようになったということです。

グレン・グールドはカナダのピアニストですが、マルティン・シュタットフェルトは生粋のドイツ人ということで、若手のドイツ人ピアニストがドイツの作曲家であるバッハの作品を演奏するというところが、売り手市場になっているような気もします。

しかしながら、グレン・グールドを抜きにしてはこの難解で高度なテクニックを必要とする「ゴールトベルク変奏曲」は、ピアノの曲として日の目を見ることがなかったのかも知れません。

そんな事を考えながら、シュタットフェルトの演奏を聴くことにしました。

シュタットフェルトが舞台に登場しますが、大柄な人でピアノの椅子を非常に低くして座ります。

ピアノに正対する姿勢は、腕の肘が鍵盤の位置より低く、手首を曲げるようにして鍵盤にのせ、どこかホロビッツの弾き方に似ているような気がしました。

アンナ・マグナレーナのための小品集の中の一つであるアリアの演奏が始まりました。

シュタットフェルトは主題のリピートを高音で美しく響かせ、自分の音楽づくりに入り込みます。

放送では、30の変奏曲のうち23曲だけを抜粋していましたが、特に不自然さは感じませんでした。

今や、人気絶頂のシュタットフェルトの演奏は、とても機知に富んでいて面白いのですが、若くして忙しくなってしまう演奏家によく見られる反復演奏に対する慣れのようなものが、時々緊張感を途切れさせていたように思います。

第3番では、リズムに一瞬の乱れがあり旋律の流れが止まってしまいそうになったり、第5番、第8番そして第9番においては曲の最後の部分で、終わり方に躊躇してしまうところが見えたりしました。

また、中盤から後半にかけては、旋律がはっきりしないで曖昧さが目立ったり、フレーズの切れ目が曖昧であったり、最後の方になると疲れのせいか、第26番や第30番においては左右の指が絡まったようにバラバラになってしまっていました。

最後のアリアも最初の美しさはどうしたのと思わせるように明瞭さに欠けてしまう始末です。

シュタットフェルトの演奏は、全体的にはバッハの旋律に自分なりの工夫を加えて、ピアノでしか表現できない若々しいバッハを演奏しようと努力していたと思います。

そしてある意味では成功していたといって良いのではないでしょうか。

しかしながら、若さゆえに陥りがちな慣れによる集中力の欠如というものがところどころに表れていたように感じました。

シュタットフェルトが売れっ子過ぎて自分で考える時間が足りないのか、あるいは自らがタレントのように感じてしまっているのか、というようなことがなければよいがと思います。

若い有能な演奏家が、プロダクションや後援者によって忙しく引き回され、消耗品のように扱われるということがよくありますので、シュタットフェルトのような素晴らしい素質を持つ演奏家をもっと大事に育てていってほしいと切に願うところです。

本日の「クラシック倶楽部」は、マルティン・シュタットフェルトが演奏するバッハのゴールトベルク変奏曲を聴いてその素晴らしい才能に驚かされる一方、タレントのような演奏家にならなければ良いがという一抹の不安を感じさせられたひと時でした。

以上、「クラシック倶楽部を楽しむ」でした。
posted by クラシックマ at 11:33| Comment(0) | TrackBack(0) | クラシック倶楽部を楽しむ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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