2008年04月16日

ジャン・マルク・ルイサダ ピアノ・リサイタル

[クラシック倶楽部を楽しむ] 本日のプログラム

[NHK BShi 4月9日放送分]

ジャン・マルク・ルイサダ ピアノ・リサイタル

(演奏曲目)

  ハイドン ピアノ・ソナタ Hob.]Y-6から 第3楽章
  ベートーベン ピアノ・ソナタ 第8番 ハ短調 作品13「悲愴」
  ショパン ピアノ・ソナタ 第3番 ロ短調 作品56

(会場)

  昭和女子大学 人見記念講堂
  (2006年10月31日収録)

[所感]

本日の「クラシック倶楽部を楽しむ」は、ジャン・マルク・ルイサダのピアノ・リサイタルです。

ルイサダについては1985年のショパンピアノコンクールで入賞を果たしてから演奏活動を意欲的に行っていて、自らの世界に引き込む演奏で多くの聴衆を魅了しており、また、NHKのスーパー・ピアノレッスンでは多彩な表現方法を披露して好評であった、とテロップ説明が流れていました。

NHKのスタッフも、昨日は小山実稚恵を紹介していましたが、1985年の同じコンクールで入賞した二人の演奏家を連日で取り上げるなど、なかなか洒落た企画をするものです。

さて、ルイサダですが、ドンドンと大きな足音を立てて舞台に登場します。

すぐに第1曲目のハイドンのピアノ・ソナタHob]Y-6から第3楽章を演奏します。

本当に長い指を丸めるようにして弾きます。

この曲は短調ですが、ルイサダは明るいはっきりとした音色で、音の一粒一粒がとてもきれいに聴こえます。

また、ルイサダのトリルは高音部ではとてもきれいな響きを聴かせてくれます。

ここで、ルイサダは、聴衆に一つの疑問を投げかけました。

ハイドンが終わると、あたかもその続きのようにベートーベンの悲愴の最初の和音をびっくりするほど強く弾きました。

NHKが編集したようにも思えませんでしたので、やはりルイサダが意図的にこのような順序で弾きたかったのだと思います。

何故、このような弾き方をしたのか、あるいはルイサダでないほかの演奏家も、時によってこのような弾き方をするのかは、私には分かりません。

そこで勝手な解釈をすると、ルイサダは「ピアノ・ソナタという形式を確立したのはハイドンであるから、いかに偉大なベートーベンであっても、まずハイドンを前に弾くことによりハイドンに敬意を表すべきだ。」という意思表示をしたのかも知れません。

とにかくこのようにしてルイサダの悲愴ソナタは始まりました。

最初の和音のびっくりするほどの大きさに比して、その後に続く第1テーマはゆっくりとロマンティックに流れていきます。

第2テーマに入るとテンポは速くなりますが、フレーズの切れ目から次の音に入るところが、ルイサダは本当に巧みに弾く演奏家であると感心してしまいました。

ただ、第2テーマを多少スタッカートが強くかかったように弾いていましたが、これは使用しているピアノがヤマハのコンサートピアノであることを意識していたせいかもしれません。(ペダルを使うと音がフワーンとするような感じで音が出ます。)

再現部のテーマでは十分に間をとりますが、その間の取り方が素晴らしくて聴く者の心を安らかにさせるように導き、やがて最後のテーマで我を取り戻すようにはっとして終わるのです。

第2楽章に入ると、ルイサダが作る、流れるような第1テーマの旋律に聴衆はすっかり引き込まれていってしまいます。

続く第2テーマも、やや遅く、ゆったりと弾かれていきます。

ここでもルイサダは、ややスタッカートをかけるように演奏しました。

第3楽章に入ると、そこはもうルイサダの世界そのものです。

音符というものは、ピアニストによってこれほどまでに緩急自在に音楽を表現できるものなのでしょうか。

もはや、この悲愴ソナタは、ベートーベンの音楽というより、ルイサダの作り上げた叙情的世界のように思えます。

演奏者は、作曲者の音楽の世界をもっといろいろな形で大きく広げられるものなのだと、ルイサダは語っているようでした。

さて、次はショパンのピアノ・ソナタ第3番です。

ルイサダは、ショパンにおいても一度作曲家から手放れた作品は、演奏家の感性と表現に委ねられるべきだというように演奏します。

第1楽章では、導入部に続くテーマを、ルイサダが感じるままに、テンポやフレーズに揺らぎを与えながら、優しく語りかけるように歌を歌っているように奏でます。

第2楽章は、速い流れるようなメロディに多少スタッカートをかけて、やはりここでもルイサダの感性で歌っていきます。

ここまで来ると、聴衆はもうルイサダの世界にすっかり入り込んで虜になったようです。

第3楽章は、極めてゆっくりとした旋律なのですが、音と音の間に途切れというものを感じさせない素晴らしさがあります。

第3楽章はこの曲の中では楽章としては一番長く、音符の動きも少ないのですが、実に間の取り方が良く次の音を期待させるような演奏で冗長性が少しもありません。

ルイサダの実力がはっきり示された楽章ではなかったでしょうか。

第4楽章は、ショパンらしい激しい不安を感じるような旋律が出てきます。

ルイサダの演奏は何回も繰り返される高音部からの下降音階を叙情的に表現していきます。

ショパンが円熟期に作曲した最後のピアノ・ソナタですが、ルイサダが演奏するとショパンの瑞々しさが溢れ出るようなロマンティックな作品に思えます。

時によって演奏を評価する人は、ルイサダが作曲家の作品に忠実ではないというかも知れませんが、自分の感性によって聴衆をこれほどまでに魅了するルイサダの演奏は、これも一つの素晴らしいスタイルではないかと思います。

本日の「クラシック倶楽部」は、ジャン・マルク・ルイサダの自分の世界で叙情的に演奏するベートーベンとショパンのピアノ・ソナタを聴きましたが、すっかりルイサダの音楽の世界に引き込まれてしまい、感動的なひと時でした。

以上、「クラシック倶楽部を楽しむ」でした。
posted by クラシックマ at 03:05| Comment(0) | TrackBack(0) | クラシック倶楽部を楽しむ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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