2008年04月14日

小山実稚恵 ピアノ・リサイタル

[クラシック倶楽部を楽しむ] 本日のプログラム

[NHK BShi 4月8日放送分]

小山 実稚恵 ピアノ・リサイタル

(演奏曲目)

  スクリャービン 即興曲 嬰ハ短調 作品14 第2
            3つの小品 作品2
            前奏曲 作品11から
              第1番 ハ長調
              第4番 ホ短調
              第5番 ニ長調
              第6番 ロ短調
              第7番 イ長調
              第10番 嬰ハ短調
              第13番 変ト長調
              第20番 ハ短調
            ピアノ・ソナタ 第3番 作品23
            2つの詩曲 作品69から
              第1番 アレグレット
            ピアノ・ソナタ 第10番 作品70

(会場)

  東京・王子ホール
 (2005年6月23日収録)

[所感]

本日の「クラシック倶楽部を楽しむ」は、小山実稚恵のピアノでスクリャービンの作品だけを取り上げて演奏しています。

スクリャービンは、私にとってはとても難解な作曲家の一人なので、スクリャービン漬けにされることを考えると一抹の不安を覚えます。

小山は以前、「43歳という若さで死んでしまったスクリャービンが、その30年間弱の作曲家としての人生で、作風が大きく変化していったことに関心を持っていて、スクリャービンの作品を演奏することによってその理由を解き明かしたい。」と述べていたように記憶していますが、その姿勢がそのまま本日のプログラムに反映されているのではないかと思います。

とにかく小山の演奏を聴いてみようと思います。

第1曲目の即興曲作品14の2では、スクリャービンはロマン派の作曲家だったのですよと、小山が聴衆に向かって紹介しているようなロマンティクな優しい旋律が流れてきました。

第2曲目の3つの小品作品2では、第1番:練習曲、第2番:前奏曲、第3番マズルカ形式の即興曲、が演奏されますが、どれも極端に短い曲で、スクリャービンが作曲する練習曲とか前奏曲とかマズルカは、ショパンなどの他の作曲家と違って刹那的旋律を作品にしているのです、と小山が説明しているようです。

そして、第3曲目の前奏曲作品11を演奏することによって、小山はもっと具体的にロマン派の他の作曲家とスクリャービンの前奏曲集の違いを説明します。

第1番:お祭り、第4番:悲しい孤独、第5番:懐かしい想い出、第6番:激しい不安:第7番:大げさな挨拶、第10番:不満、第13番:癒しの時、第20番:励ましと休息、
と小山は次々と演奏続けながら、スクリャービンの作品は日本の短歌のように少ない音符でテーマを浮き彫りにする不思議な力があることを明らかにしていきます。

また、第4曲目のピアノ・ソナタ第3番では、“1898年のスクリャービンが26歳の時の作品で、パリ滞在中の新婚生活が順調でなかった揺れる気持ちが表れている”というテロップが流れていましたが、スクリャーピンの人生の前半で、作風が変貌する前の作品を小山が演奏します。

第1楽章:フランス風の響きはありますが、華やかになりきれない不安を含む旋律、第2楽章:左手による否定的な強い演奏によって、右手の旋律が打ち消される、第3楽章:争いの後の静かな反省と後悔、第4楽章;激しい後悔を引きずりながら、過去を取り戻したいという気持ちを抱くが結局挫折。

小山は、スクリャービンがロマン派的ピアノ・ソナタを人生前半には作曲していて、しかも、左手の演奏技術には特徴があると説明しているようでした。

さて、ここで小山はスクリャービンの人生の前半期について説明しましたよという感じで、一度舞台から退場します。

小山は、再び舞台に登場していきなり第5番目の2つの詩曲作品69から第1番を演奏します。

これは演奏というより、変形的和声音階を弾いて聴かせたというほどの短い曲でした。

もうそこには、前半で聴いたスクリャービンのロマン派的要素はないということを分からせるに十分な一瞬でした。

小山がスクリャービンの作風の変貌を語りたかった瞬間がこの1曲に凝縮されてしまったように感じました。

そして、第6曲目は1913年にスクリャービンが41歳の時に作曲された最後のピアノ・ソナタ第10番が演奏されました。

スクリャービンが別荘の自然と自分を一体化したような作風というテロップ説明がありました。

小山はピアノ・ソナタ第10番の演奏で、スクリャービンの作風の変貌について明確に表すことに成功しました。

右手のトリルの多いこの曲は、もうすっかり音階や調性から解放されて、自然の中で鳥や蝶が自由に飛び回る様子や、小動物が動き回る様子などを描写します。

印象派に近いかと言えばそうではなく、むしろ和声的には現在音楽の響きが聞こえてきます。

スクリャービンだけの作品で企画された小山のピアノ・リサイタルは、小山の造詣の深さによってスクリャービンの作風の変貌を演奏作品によって見事に説明してくれたと思います。

小山が、このように素晴らしい演奏家として、スクリャービンの研究をしていることには本当に感動を覚えてしまいます。

スクリャービンが難しいと思っていた私も、今日からは少しだけスクリャービンを理解して作品を聴くことができるような気がします。

本日の「クラシック倶楽部」は、小山実稚恵が演奏するスクリャービンによって、スクリャービンを知るという貴重な体験ができて素晴らしい時間を過ごせました。

以上、「クラシック倶楽部を楽しむ」でした。
posted by クラシックマ at 01:37| Comment(0) | TrackBack(0) | クラシック倶楽部を楽しむ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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